お局さま観察日記

今日のお局さま

マダムの事件②

とにかく私は出勤し
お局さまにマダムがお休みする旨を伝えた


お局さま「え?だって私の所には連絡無いわよ?」


みつこ「かなり動揺してたので、慌ててたんじゃないでしょうか」
(あなたとは話したくないんですって、なんて言えない。。。)


お局さま「普通はね、電話じゃなくって1回出勤して話しに来るもんなの!普通はね!」


え?


お局さま「出勤してきて、どれくらいお休みするのか、決めるもんなの!」


みつこ「え、でも、旦那さん集中治療室に入っちゃってて、それどころじゃないんじゃないかと。。。昨晩の話ですよ?」


お局さま「だってその旦那、まだ生きてるんでしょう?」


みつこ「え?。。。はい。。。」


お局さま「だったらいいじゃん」


何が?


なんだかよく分からなくなってきた
マダムからまた電話があったら
お局さまに連絡するよう伝えますね、みたいな事をやっと言って
仕事に戻った


その日は夕方まで頭がぼんやりしたままだった
お局さまのあの一言はなんだったのだろう?
“まだ生きてるんでしょ”って何?


気が付けばもうみんな退社していて、残ってるのは私だけだ


携帯が鳴った
マダムからだ
旦那さんの意識はまだ戻っていないらしい


みつこ「今日の事は私からお局さまに伝えました、それでね、マダム」


マダム「うん、分かってるよ、さっきお局さまに私電話して事情を話したの
そしたらね、なんて言ったと思う?
“ああ、はいはいはい、で、いつまで休むつもりなの?”だって。。。
私ね、もうこのまま辞める。あの女の顔はもう見たくない、絶対に許さない」


みつこ「マダム、ごめんなさい。もういいから、とにかく今は旦那様についてあげて下さい」


もう、みっちゃんが謝る事じゃないじゃな~~い
くすっと笑った悲しい声
泣かれるよりつらいよ
心が押しつぶされそうだった


違う、今いちばん押しつぶされそうなのはマダムの方だ
どんだけ心細い思いで病院にいることだろう?
私がお局さまに怒れば良かった
こんな時にあなたは何て事を言うんだ!って
きつく言ってやれば良かった


ごめんなさい、マダム
結局私は何もできなかった


嫌だなこんな感じ
しんどい
とにかくもう、早く家に帰ってお風呂に入ろう


「あれ?みつこちゃんまだ居るの?」
清掃のおじさんだ
ぽっちゃり体型に外国人みたいに彫りの深い顔
暖炉のあるログハウスに住んでいそうなこのおじさん
私の中での呼び名は“ロバートおじさん”


「もう帰るところです。あ、チョコレート食べます?」


ロバートおじさんには毎回、チョコレートだの飴だのを一粒あげる
餌付け


「ありがとう。じゃあ今食べちゃお」
ぱくっとチョコレートを食べるロバートおじさん
普段糖を節制していらしく
一粒でこんなほっこり顔


今日はこれに救われた